<宣言>
世界運河会議ナゴヤ2020宣言“ここからつくろう、新しい流れを”。
International Canal Forum NAGOYA2020 Declaration ”Activate the New Channel”

世界運河会議NAGOYA2020は、運河のあるべき姿、運河を有する都市のあるべき姿についてここに宣言する。

運河は長きにわたって私たちの暮らしを支えてきた。とりわけ産業革命以降、工業と物流の発達とともに近代社会に必要欠くべからざるものとなっていった。

沿岸には工場が林立し、煙が立ちこめ、艀が往き来し、大小様々な貨物がゆっくりと移動する、そうした運河に人びとは産業の勢いを感じ、都市内の他では見ることのない,そのスケールの大きさに人びとは興奮を覚えた。
しかしながら、陸上輸送の台頭、産業構造の変化によって運河はかつての勢いを失い、人びとから遠い存在となった。とはいえ、倉庫などは残り続けた。もとから人びとの目に触れる機会は少なく、これほどまでに大きな空間はもはや要らないとも思われた。
一方、都市は産業、政治、文化が成熟する一方で、物理的、経済的な劣化が進み、人口減少などにより縮小均衡への道をたどり始めた。
グローバルに都市間競争が顕著になっていった中で、運河という取り残された巨大な空間は、新たな価値を生むものとして再び目が向けられるようになった。今回の主題である運河の再生である。
環境の質が低いことも、災害に対する脆弱性もさほど問題ではなかった。空間のあり方、使い方に係る法制度も足かせになってきた。

いまここで私たち市民は運河とどう向き合うかと考えると、運河の問題は都市の問題、社会の問題であることに気づかされる。運河を見つめることで、それは自ずと都市や、社会のあり方を問うことになるといえるのではないか。運河の再生を通じて私たち市民は新しいコモンズに挑戦していこうではないか。ブラウンフィールドの運河を塗り替えていくことが、私たちの生活を、都市を、法律を、さらにはガバナンスのあり方をも変えるかもしれない。
この過程で、私たち自身が変わることができるかもしれないと、心を躍らせている。
具体的には次の三つがある。

【先端エリアとしての運河】
運河の価値を最大限に活かし、いままでの社会資本の枠を超えて、人の本質に迫るアート、デザイン、テクノロジーなどを支える文化インフラを目指す。
【知的成長を促進する運河】
運河の再生を、都市を戦略的且つ知的に成長させるきっかけとし、ひとびとの気づきと学びの機会とする。
【多様性と挑戦を受け入れる運河】
運河および運河を有する都市を、多様性と実験を受け入れる舞台としてデザインし、市民/企業/行政をエンパワーメントし、エコシステムをはぐくむ。

以上を踏まえると、あらゆる主体が社会を持続可能にするためのゴールに向かい,アクションを起こすための枠組みが欠かせない。その枠組みの中に調整,マネジメントを行って未来を構築していく責任ある運営マネジメント主体を設置することが望ましい。
いま2030年に向けて世界はSDGsを達成しようと向かっている。個々の運河によって置かれた条件、目指すべきものは異なり、その国やその自治体のSDGsとも整合させるべきだろう。世界の運河もこの挑戦に貢献すべきだ。そのために実践と議論を続けていくことが必要である。
そしてその先にはあらたな都市のコモンズが生まれること期待する。

世界運河会議ナゴヤ2020宣言“ここからつくろう、新しい流れを”。
International Canal Forum NAGOYA2020 Declaration ”Activate the New Channel”